弁護士について
職務発明対価請求の交渉や手続を、発明者ご自身でやられることも十分可能です。しかし、手続には法律や判例といった専門知識が必要ですし、勤務などの時間的な制約もあることかと思います。法律の専門家である弁護士に依頼するのもまた、一つの選択かと思います。
それでは、どのような弁護士に依頼をすればいいでしょうか。一概に弁護士といっても、興味や経験のある分野はそれぞれ異なります。
職務発明対価請求については、以下の知識・経験のある弁護士が向いていると思われます。
- 特許法の知識のある弁護士
- 技術に理解のある弁護士
- 弁理士との協働ができる弁護士
また、弁護士に依頼される際はかならず以下の事項を確認しましょう。
- 企業とのコンフリクトの有無
- 費用はどれだけかかるか
1 特許法の知識のある弁護士
弁護士といっても興味や経験のある分野はそれぞれ異なります。特に、特許法のような特別法は取扱分野としていない弁護士もいます。少なくとも依頼の際には特許の知識と経験がある弁護士か否かは確認するべきでしょう。
また、職務発明対価請求訴訟は近年になって類型化した訴訟形態であり、特許法も毎年のように改正されていますから、この分野について最新の実務動向をキャッチアップしている弁護士が望ましいでしょう。
2 技術に理解のある弁護士
特許発明対価請求訴訟を提起した場合、かなりの部分を技術論が占めることになります。したがって、発明者が弁護士に対して発明の説明をして、技術的な理解を深めておく必要が生じます。技術を理解している弁護士ならば、このような手間を省けることはもちろんのこと、技術と法律という両方の分野に精通しているからこそ可能な発想もあり得ます。
もっとも、近年は発明の内容も専門化・細分化されており、全ての技術に精通した弁護士が存在しないのは当然です。訴訟を依頼するのは、技術系のバックグラウンドを有する弁護士、という程度で構わないと思います。特に自ら発明をしたことのある弁護士、知財部経験のある弁護士、技術者であった弁護士等が望ましいことは言うまでもないでしょう。
3 弁理士との協働ができる弁護士
弁理士は知的財産権に特化した、法律プロフェッショナルです。特許請求の範囲の解釈には専門的な知識が必要となる場合がありますが、そのような場合に専門家である弁理士と協働できるほうが有利でしょう。もっとも、弁護士はそのような外部専門家とのコネクションを持っていることが通常です。
4 請求先とのコンフリクト
コンフリクト(利益相反)とは、ある行為が依頼人の利益になると同時に相手方の利益にもなってしまうことをいいます。たとえば、相手方会社の法律顧問や代理人をしている弁護士に依頼をしてしまうと、コンフリクトが生じることになります。弁護士は、このようなコンフリクトが生じる行為(利益相反行為)をすることができないのは当然です。
いわゆる知財弁護士の中には、企業の法律顧問や代理人をしている弁護士がいます。そのような弁護士は、当該企業に対する請求案件を受任することはできません。特に大きな法律事務所は企業のクライアントの数も多いため、コンフリクトが生じる可能性も、小さな事務所と比べて高いといえます。また、職務発明対価訴訟は企業側を相手にするため、そもそも受任しない方針の弁護士もいらっしゃいます。
弁護士に依頼する時には、このようなコンフリクトの有無を確認する必要があります。
5 費用等の説明
弁護士は、費用等について説明したり、見積りをしたりする義務があります。少しでも不明確な点があったら質問をしましょう。費用等について明解かつ納得のいく説明がない限り、その弁護士には依頼をするべきではありません。
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