算定式
特許法では、その発明により使用者等が受けるべき利益の額と、その発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して相当の対価を定めることになっています。
その発明により使用者等が受けるべき利益の額は、特許を受ける権利の譲渡時における額です。しかしながら、譲渡時には、そもそも特許されるかどうかすらわからず、マーケットの規模や市場性もわからないのが通常です。よって、譲渡後の様々な事情を考慮して事後的に定めることができるとされています。
そして、かかる利益は、使用者が特許発明を実施して得られる利益ではなく、特許発明の実施をする権利を独占することによって得られる権利(独占の利益)といわれています(独占の利益については別項を参照して下さい)。
以上より、相当の対価の算定方法を式で表すと以下の通りです。
すなわち、相当の対価は、特許によって会社が独占することができた利益に発明者が貢献した割合(=1ー使用者の貢献度)を乗じた額です。
もっとも、共同発明者が複数いる場合は、対価は共同発明者の貢献度に応じたものとなります。
【ご参考までに:ご存知ですか、職務発明対価算定のメカニズム(tokyo devices記事)】
裁判例
相当の対価算定の枠組みは、裁判例でも明らかにされています。例えば、青色LED訴訟の地裁判決では、相当の対価は、独占の利益に発明者の貢献度を乗じたものとされています。
東地判平成16年1月30日(平13(ワ)17772号)
従業者によって職務発明がされた場合,使用者は無償の通常実施権(特許法35条1項)を取得する。したがって,使用者が当該発明に関する権利を承継することによって受けるべき利益(同法35条4項)とは,当該発明を実施して得られる利益ではなく,特許権の取得により当該発明を実施する権利を独占することによって得られる利益(独占の利益)と解するのが相当である。
<中略>
このようにして,使用者が特許権の取得により当該発明を実施する権利を独占することによって得られる利益(独占の利益)を認定した場合,次に,当該発明がされる経緯において発明者が果たした役割を,使用者との関係での貢献度として数値化して認定し,これを独占の利益に乗じて,職務発明の相当対価の額を算定することとなる。
特許権は,その存続期間を通じて特許発明の実施を独占することのできる権利であるから,上記の独占の利益も,また,特許権の存続期間満了までの間に使用者があげる超過売上高に基づく利益を指すものである。当該利益の認定に当たって,事実審口頭弁論終結時までに生じた一切の事情を斟酌することができるのは,当然である。