請求されてしまったら
企業が発明者に職務発明対価を請求された場合は、どのような点に注意をすべきでしょうか。
会社側に有利に働く事情のうち主なものを以下に示します。会社としては、これらの事情を挙げて相当の対価を減額したり、場合によってはすでに十分な対価を支払っていると主張することになるでしょう。
- 職務発明とはいえない(自由発明である)
- 職務発明対価請求権が時効消滅している
- 請求者は真の発明者とはいえない
- 特許発明が実施されていない、特許製品の売り上げがない
- 特許発明に技術的価値が無い
- 特許が他者に実施許諾されていない
- 既に十分と思われる対価を支払っている
- 無効審決が確定し、特許が遡及的に消滅した
相当の対価の額は客観的に定まるものであり、算定のための式も実務上明らかになっています。しかし、額の算定には様々な不確定要素があります。すなわち、多くの要素を考慮する必要がある上に、それらの個別の要素の評価基準は明確ではないのです。
例えば、仮想実施料率や超過売上といった、仮想的な値を設定する必要があり、これらの値は判断主体によって異なってくるのが通常です。実務上も、地方裁判所と知財高裁の認定額に開きがあることは決して珍しくありません。
職務発明対価の額を定める交渉にあたっては、十分な根拠を示して、会社と発明者がお互いに納得できるような議論をする必要があるでしょう。特に、発明者の貢献度といった要素はあとに続く研究者のモチベーションに直接関わる事項ですので、慎重に議論する必要があります。