消滅時効について

職務発明譲渡の相当の対価請求権も、以下に示す時効期間の経過によって消滅しますので注意が必要です。

消滅時効の起算点は、職務発明規則等に、いわゆる発明報酬の支払時期の定めがあるか否かによって異なります。

定めのある場合
支払の時期から10年
定めのない場合
特許を受ける権利を譲渡した時から10年

会社との関係を考えると、会社の定める発明報奨金を不服として、相当の対価との差額を在職中に請求することはまれなのではないかと思います。

相当の対価請求権の時効消滅については、慎重に検討する必要があります!!

参考:東京地判昭和58年12月23日

二 そこで、次に、抗弁2(消滅時効の援用)について検討する。

  1 職務発明について、特許を受ける権利を使用者に承継させたときは、発明者である従業員は相当の対価の請求権を取得するが、特許法第三五条第三項の解釈上、右請求権の発生するのは、特許を受ける権利の承継の時であると解するのが相当である。これは、同法において、「特許を受ける権利」が特許権とは別個の独立した権利とされており(同法第三三条)、右の対価が「特許を受ける権利」を承継させることに対する対価である以上、当然のことであるというべきである。したがつて、右請求権についての消滅時効は、その行使をすることができる時、すなわち承継の時から進行する

参考:最三小判平成15年4月22日

職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる旨を定めた勤務規則等がある場合においては、従業者等は、当該勤務規則等により、特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに、相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法35条3項)。対価の額については、同条4項の規定があるので、勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは同項により算定される額に修正されるのであるが、対価の支払時期についてはそのような規定はない。したがって、勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは、勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は、相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして、その支払を求めることができないというべきである。そうすると、勤務規則等に、使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には、その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である。

参考:知財高判平成21年6月25日

特許法旧35条3項に基づく相当の対価の支払を受ける権利は、その金額が同条により定められたいわば法定の債権であるから、権利を行使することができる時から10年の経過によって消滅する(民法166条1項、167条1項)と解するのが相当である。

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